Pageant

72歳、史上最高齢の出場者が語るミスコンの魅力 「いくつになっても、新しい自分に出会える場」

2021.05.20

2021.06.12

72歳、史上最高齢の出場者が語るミスコンの魅力 「いくつになっても、新しい自分に出会える場」

72歳でミスコンに出場。年齢を感じさせない美貌で審査員席の話題をさらったのは、熊本県・阿蘇で農業をしながら民泊を営む村山茂子(むらやま・しげこ)さんだ。ディレクターとしてミスコン現場にかかわる筆者がミスコン出場者の葛藤と成長をお届けする連載、第5回の主役は彼女。古希をこえて未知の世界であるミスコンに挑戦した心境と、離婚と再婚、夫の死、がん闘病など幾多の困難を乗り越えてきた半生に迫る。

「ミスコンの舞台裏」連載一覧はこちら

ミスコン挑戦が「新しい人生への入り口」に思えた

「だって、72歳よ。無理、無理って、最初はお断りしたんですよ。でも締切日当日、なんだか挑戦してみたくなって。チャンスの神様は、グズグズしているとアッカンベーして通りすぎちゃうっていうでしょ。だからあわてて応募したんです」

茂子さんはそう笑いながら、コンテストに応募したときの心境をふり返った。ベリーショートのグレイヘアから、チャーミングな目もとがのぞく。みずからを「天然で抜けている」と評する彼女。年下の私相手にもえらぶらず、同年代の友人のように接してくれる。

▲シックな黒のドレスを着こなす茂子さん

50代で離婚を経験。再婚を機に熊本に移住して、夫ともに農業と民泊をはじめた。慣れない土地での生活だが、二人三脚の暮らしは楽しかったという。ところがそれから数年して、最愛の夫が病気で逝去。自身にも胃と腸にがんが見つかり手術するなど、たび重なる不運が茂子さんを襲った。心身ともに疲れはてた彼女はうつを発症し、2年間の療養生活を送ることになる。その後も熊本大震災や九州北部の豪雨に見舞われるなど、平穏とは言いがたい半生だった。

「これからだっていつ予測しない不運が訪れるかと思ったら、怖くて怖くて。70歳を過ぎてからは独り身の不安感も骨身にしみて、悶々とする日々を過ごしていました。ミスコンにお誘いいただいたのは、ちょうどそんなときのこと。これは新しい人生への入り口かもしれない。漠然とそんな気がしたんです」

茂子さんが応募したのは、ミセス・インターナショナル/ミズ・ファビュラス(以下、ミセス・インターナショナル)の60歳以上部門であるノーブルクラスだ。年齢の上限はなし。彼女は同大会史上最高齢での出場者となった。

「これまでの人生、それなりにいろいろ経験してきたけど、そういえばミスコンに出たことってなかった。この年でまだやっていないことがあったんだと思うと、ワクワクしてきて。自分の知っている自分って、実はほんの一部。新しい自分に出会えるって心が躍るし、変わっていく過程自体もたのしいものですよね」

年齢を感じさせない美貌で「フォーエバーヤング賞」を獲得

▲毎日の畑仕事は、茂子さんにとって一番の美容法

茂子さんが大会の準備で一番大切にしたのは、表情だった。理想は周りを包み込むような、あたたかい笑顔。それに近づけるよう、暇を見つけては鏡に向かってほほえみかけた。畑でとれた野草を使った総菜と玄米を中心に、肉、魚、果物などをバランスよくとるように心がけた。日課は体力づくりのためのウォーキング。緩やかな坂道や高原の原野を5000歩から10000歩、2時間かけて歩くと、体がポカポカとあたたまるのを感じた。

自宅の廊下には全身鏡をおいて、ウォーキングやポージングも練習。14センチのヒールを履きこなすため、歩くときはかかとを上げた「エアヒール状態」を習慣にした。畑仕事で肌のダメージが気になるときは、入浴中の泡パックとセラムマスク、湯上がり後のフェイスパックでカバー。顔を引き上げる効果があるというエクササイズも取り入れた。

「人と比べるのではなく自分と向き合うのが、私の美容法。自分の心と向き合うことで、内面に蓄えられた経験が意味をもち、原石のように輝き出すんです。それが表情にもあらわれる。おかげで心身ともに今までで一番美しい思える状態で、大会に臨めました」

大会当日、赤と黒を基調としたロングドレス姿でステージに立った茂子さん。熊本の小さな町からのミスコン挑戦は、新聞やラジオ、広報紙、ケーブルテレビなど数々のメディアで取り上げられ、地元の人々を元気づけた。年齢を感じさせない美貌に、審査員席も騒然。茂子さんは、いつまでも若々しい女性に贈られる「フォーエバーヤング賞」を受賞した。

▲堂々としたスピーチは、地元・阿蘇の人々も元気づけた
▲「フォーエバーヤング賞」を獲得し、ステージでほほえむ茂子さん

「ミスコンって、けっして特別な場所じゃない。自分らしく輝きたいと思うすべての女性に、道は開かれている。ミセス・インターナショナルに出場して、つくづくそう感じました。やってみないとわからないことって、やっぱりあるものね。本当に楽しかったです」

年下のミスコン出場者から学んだ「社会貢献の精神」

▲毎日のウォーキングで鍛えあげたしなやかな身体

ミセス・インターナショナルで同じ時間を過ごした女性たちは、ほとんどが10歳以上年下。娘ほど年齢が離れていることも少なくなかった。茂子さんが驚いたのは、そんな若いファイナリストたちが、すすんで社会貢献活動に取り組んでいたことだった。

「それに比べて、私は自分の不安にとらわれて、社会のために何も行動できていなかった。70代といえば、本来なら世の中に恩返しをしていかなくてはならない年齢です。深く反省するとともに、これからは地元の活性化や子どもたちの未来、女性の活躍のために自分にできることを実行していこうと思わされました」

茂子さんが営む民宿には、たくさんの中学生や高校生が農業体験に訪れる。未来ある子どもたちに自然の美しさや植物たちの強さ、地元・阿蘇の魅力を伝えるのが、彼女の生きがいだ。野草料理教室をはじめ、自分の生活を自分で整えるコツも発信している。最近では、お年寄りの集いや学童保育でボランティアの講座も開講。今後はミセス・インターナショナルで身につけたウォーキングやメイクアップの技術についても話してみたいという。

年齢は、それまでの人生で集めてきた原石の数。それを花開かせられるかは、自分の心と向き合い、ときに勇気を出して新しい世界に飛び込めるかどうかにかかっている。ミセス・インターナショナルの舞台で、茂子さんはダイヤモンドのように輝いていた。女性の可能性が花開く瞬間。それに立ち会える感動は、何度経験しても色あせることはない。

伊藤 桜子 Sakurako Ito

ローズ・クルセイダーズ/一般社団法人国際女性支援協会 代表理事外資系航空会社の客室乗務員を経て、外資系投資銀行勤務。Best Body Japan 日本大会グランプリ(クイーン)/ミセス・インターナショナル2015 日本代表を務めた経験を持つ。みずからの経験をもとに、年齢や立場、国籍などの枠にとらわれない女性の美を追求する。

編集協力/株式会社Tokyo Edit

172 view

COLUMNIST

伊藤 桜子