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子育て後の第2の人生、新たな挑戦はミスコン出場 52歳のシングルマザーがグランプリに輝くまで

2021.05.20

2021.06.12

子育て後の第2の人生、新たな挑戦はミスコン出場 52歳のシングルマザーがグランプリに輝くまで

着物の似合う凛とした美貌に、あたたかい人柄。和風美人を体現する松田千枝子(まつだ・ちえこ)さんは、52歳にして3人の子どもと4人の孫をもつシングルマザーだ。ディレクターとしてミスコン現場にかかわる筆者がミスコン出場者の葛藤と成長をお届けする連載、第3回の主役は彼女。子育てを終えてふたたび自分の人生を歩みはじめた千枝子さんが、ミスコンを新たな挑戦の舞台に選んだ理由とは。

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子育て後の第2の人生、ミスコン挑戦に心が動いた

「子どもたちが独立して、子育ても一段落。『これからはお母さんの人生を生きてほしい』って言われて、うれしかったですね。でもあらためて考えると、私がやりたいことって何だろうって(笑)。第2の人生は、自分と向き合うところからはじまりました」

自分らしさとは何だろう。自分らしく生きるためには、どうすればいいのだろう。考えた末に千枝子さんがたどり着いたのは「自分の気持ちに正直にあること」だった。周りの目にとらわれず、心から楽しいと思えることに挑戦しよう。それをコツコツと続けていくうちに、自信もわいてくるはずだ――。これからの人生を想像するだけで、胸が高鳴った。

▲孫とのひとときは癒しの時間

そんなときに出会ったのが、ミセスのためのコンテストであるミセス・インターナショナル/ミズ・ファビュラス(以下、ミセス・インターナショナル)だった。生き生きと自分を表現する、同年代の女性たち。その姿は理屈抜きに美しかった。千枝子さんは思わずぼんやりとするほどに、心惹かれていた。

私もあんなふうになれる? いや、この年でミスコンなんて人からなんて思われるか。やはり人目が気になる自分が、そうブレーキをかけた。何よりも、見知らぬ世界に飛び込むのが怖かった。しかし迷った末に、千枝子さんはコンテストにエントリーした。

「これまでの人生、いいことばかりじゃなかったし、もう一生分の涙を流したんじゃないかと思うほどつらいこともあった。でも52歳を迎えた今、すべてが必要なことだったって思えるんです。そんなタイミングで出会った、ミセス・インターナショナル。これも、未来の私をあるべき場所に導くためのものかもしれない。そう強く思いました」

小千谷縮に日本髪 美のお手本は「和の心」

千枝子さんは、昔ながらの日本の文化を大切にする女性だ。着物や日本髪。四季折々の自然と、それと融合する木造家屋。今も日本に残る「和の心」は世界に誇れるものだと、彼女は言う。

「着物の中でもお気に入りは、小千谷縮(おぢやちぢみ)を使ったもの。地元の新潟県小千谷市に古くから伝わる夏の着物で、汗をかいてもサラリと快適なんです。スッキリと結った日本髪と合わせて粋に着こなせたら、素敵ですよね。

木のぬくもりを感じる日本家屋、格子戸から漏れるやわらかい明かり、四季のうつろいとともに顔を変える日本庭園、ハッと目を引く赤い番傘……。いずれも身近にあるものながら、一度見ると忘れられない存在感をもっていますよね。私が目指す美しさとは、そういうもの。人ではありませんが、美のお手本にさせてもらっています」

▲日本髪に和服姿で庭の木々を眺める千枝子さん。自然と背筋が伸びる

身近にある美に目をとめ、それをたのしみいつくしむ。千枝子さんはこうした和の心を、コンテストの準備にも生かしていたという。不安と焦りに負けそうになると、道辺に生える木々や草花を眺め、空を見上げた。背伸びしなくてもいい、ありのままでいい。あるがままで美しい自然を見ていると、そう思えた。

新型コロナウイルスの拡大で東京で開催されるレッスンに参加できなくなったときは、地元でできるトレーニングに集中した。疲れたときは、地元の名産品である酒粕や甘酒で精をつけた。SNSをのぞけば、応援や励ましの声が届いている。私ってなんて恵まれているんだろう。そう思うと、1人でのウォーキングやスピーチの練習も苦にならなかった。

シングルマザー部門で堂々のグランプリを獲得

▲カイウラニ王女になりきりポーズを決める千枝子さん

千枝子さんが出場したのは、ミセス・インターナショナルのシングルマザー部門であるグレースクラスだ。目指すのはただ美しいだけでなく、優雅でエレガントな女性。千枝子さんは「白い孔雀」と呼ばれた絶世の美女、ハワイのカイウラニ王女をイメージした。

選んだ衣装は、孔雀を思わせる模様をあしらった深い青のドレス。舞台ではカイウラニになりきり、ポーズを決めた。和服を着こなす彼女らしいしなやかなウォーキングも注目され、千枝子さんはグレースクラスのグランプリを受賞した。

▲グランプリ受賞の瞬間、思わず涙する千枝子さん

「とにかく胸がいっぱいで、この場にいる自体が本当に幸せでした。勇気を出して踏み出した1歩とたくさんの人の応援が、私をここに導いてくれた。グランプリ受賞はその証です」

大会後、彼女の家ではもうひとつの受賞式が開催された。「あーちゃん(おばあちゃん)、おめでとう」――お孫さんから、手作りのグランプリメダルの贈呈だ。心のこもった、世界で1つのメダル。この子のためにも、第二の人生を思い切り楽しもう。千枝子さんは満面の笑顔でそう決意した。

大会を経て、地域や社会が抱える問題により目が向くようになったという千枝子さん。日本文化の魅力をテーマに講演をしたり、ミセス・インターナショナル出場の経験を発信するようになった。東京に比べると保守的な空気の残る東北地方の女性にも、新しい挑戦をするよろこび、自分を表現するたのしさを知ってほしい。そんな気持ちに突き動かされて、彼女はますます活動の幅を広げている。

人生にはいくつかの転機が訪れる。そのチャンスをものにするのはいつだって、怖がらずにあらたな1歩を踏み出す人だ。その覚悟と勇気が、女性を一段と美しくもする。千枝子さんがミセス・インターナショナルで踏み出した1歩は、どんな未来につながっていくのだろう。ディレクターとして、また女性として、期待に胸が膨らむ思いだ。

伊藤 桜子 Sakurako Ito

ローズ・クルセイダーズ/一般社団法人国際女性支援協会 代表理事外資系航空会社の客室乗務員を経て、外資系投資銀行勤務。Best Body Japan 日本大会グランプリ(クイーン)/ミセス・インターナショナル2015 日本代表を務めた経験を持つ。みずからの経験をもとに、年齢や立場、国籍などの枠にとらわれない女性の美を追求する。

編集協力/株式会社Tokyo Edit

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COLUMNIST

伊藤 桜子