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GoogleやAppleも積極活用 成長企業が注目する「コーチング」とは?

2021.12.08

2021.12.16

GoogleやAppleも積極活用 成長企業が注目する「コーチング」とは?

変化が激しい今、自分らしい人生を歩むためにはどうすればいいのだろうか。いたずらにトレンドを追いかけたり、誰かが出した答えを模倣するばかりでは、本当に自分がやりたいことは見つからない。必要なのは自分の頭で考えて答えを出し、それに沿った人生を歩む力だ。プロフェッショナルコーチの眞柄 真有奈(まがら・まゆな)さんによると、コーチングはその力を身に着けるためにふさわしい技術なのだという。コーチングの基礎知識からその有用性、企業における活用事例までを眞柄さんに聞いた。

コーチングで身につく「社会を生き抜く力」

情報化が進む現代、誰もが簡単に世界じゅうの情報にアクセスできるようになった。国境を超えたリアルタイム通話も容易になり、多様な価値観が認められつつある。その半面もたらされたのが、不確実性や流動性の高い社会だ。これまでのスタンダードや”正解”が一夜にしてひっくり返る――私たちはそんな不安定さを当たり前として生きていかなければならなくなった。このような世の中で必要なのは「決まった正解を探し出す力」よりも、「課題を見つけて正解に変える力」ではないだろうか。

そこで注目されているのが、コーチングだ。コーチングとは、私のようなプロのコーチとの対話を通して、自発的に考える力を養う手法を指す。本当の夢や目標、希望が何か、それを実現するためにどうすればよいかについて、その人自身が答えを見つけ出せるようにサポートするのが、コーチの役割だ。あくまでも「サポートする」のであって、答えを教えたりアドバイスをするわけではない。正解は1つではなく、自分以外の誰かが決められるものでもないからだ。こうしてコーチとの対話を繰り返しながら、自分の個性や強みを生かす力や、物事を自発的に考える力を身につけるのがコーチングの目的である。

すでにお気づきかもしれないが、これらの力はビジネスでも必要不可欠だ。世界的な有名企業であるGoogleやAppleも、人材開発の手法としてコーチングを積極的に取り入れている。また、経済誌Forbesによると、ヨーロッパ企業500社のうち88%がコーチングを活用しており、うち92%が「効果的な運用による組織の本質的な面に良い影響を及ぼす」と回答した。日本企業の間でも従来のトップダウン型マネジメントから社員の個を尊重した組織づくりへの移行が進んでおり、コーチングの需要はますます高まっている。

自分のことなんて、コーチと対話しなくてもわかる――そう思うだろうか。でも、自分のことが一番よくわからないのが人間というものだ。自分のことだからこそ客観性を欠くし、世間の風潮や誰かの答えに左右されていることも気づきにくい。自分はどんな人で、どんな人生を歩みたいか。周りの人に何も言われなかったら、本当は何がしたいのか。こうした本質的な問いに答えを出すためには、やはり良質なシンキングパートナーを持つことが大切なのだ。人生は正解のない問題に立ち向かうことの連続だ。そんなときにより自分らしい答えを出すために、コーチングはあると考えている。

コーチの伴走によって自問自答では出てこない答えが得られる

それでは、コーチングとは具体的に何をするのだろうか。先にお伝えした通り、コーチと1対1で対話を行う。これを最低3か月程度から、長ければ数年続ける。対話のテーマはコーチではなく、自分で設定する。テーマにタブーはなく、その人が解決したいことや成長したいことを自由に挙げてもらう。

単にテーマの設定と言っても、ひと筋縄にはいかないことが多い。人は「こうしたい」と「こうすべき」を混同しがちだからだ。「会社で昇進したい」という人が本心では「好きなことで起業したい」と思っている例、「パートナーとの関係を改善したい」という人が本当は離婚を望んでいるといった例は枚挙にいとまがない。コーチは特殊なスキルを使って言葉にあらわれない本心を汲み取り、テーマ設定のサポートをする。最初に持ち込まれたテーマから、その人が本当に望むことは何か、クライアントと共に深堀りしていく。ーマ達成のためのプロセス設定やアイデア、TODO、その実行のためのリソースなどを洗い出していくのである。リソースには成功体験や強みといった目に見えないものも含む。コーチが伴走することで、自分自身で適切なモチベーションコントロールができるようになり、より早く高い成長を得ることができる。

毎回のコーチングの後には必ず、次回に向けての宿題を設定する。そして毎回、その宿題によってどんな学びや経験があったかを確認するのだ。大切なのは結果の良し悪しだけではなく、プロセスから浮かび上がるその人らしさなのである。夢や目標、希望を思い描くと気分が良くなるが、それをコツコツ一人で実現するのは至難の業だ。コーチとともに、自然と目標に向けての行動をしたくなる心の土台をつくることで、なりたい自分の実現へと着実に近づいていけるようにサポートする。例えるなら、コーチは精度の高いナビゲーションシステムやGPSのようなもの。対話を通してその人の現在地と目的地までの距離、ルートを明らかにし、目的地まで安心して行けるように手助けするのである。

コーチングは「自分らしさを楽しみながら生きる手段」

私はこれまで、個人・法人問わず1,300名以上の方にコーチングを行ってきた。その中で、コーチングのスキルは自分らしい人生を歩むために活用できると確信している。コーチングを受けるとやるべきことが明確になり、自分に自信がわいてきて、人生に充実感を抱けるようになるのだ。こうお伝えしても非常に抽象的なので、事例を紹介しよう。あるとき担当したのは、従業員数300名程度のIT・WEB系企業だった。プレイングマネージャーとして多忙な日々を送る5名の社員の方々に対してコーチングを行った。

Aさん、Bさんの2名は、やることが多すぎて仕事がスタックしていることに危機感を感じていた。タスクと思考の整理をしながら、重要だが緊急ではない部分に取り組みたいという希望があがった。6か月以上の対話を通じて、Aさんには「人に頼ることが苦手」「リスクを考えすぎる」という”クセ”があることを発見。何が心理的ブロックになっているのかを探るうち、周囲との連携ををリソースとして使えるようになり、思い悩む時間も格段に減った。一方のBさんは、やるべきことが明確になり年収が数十万単位でアップ。仕事以外のやりたいことも見つけ、人生をより充実させるべくチャレンジ中だという。

Cさん、Dさんからは、「何のために仕事をするのか」「何を成し遂げたいのか」をより明確にして仕事の決断力を高めたいとの要望があった。行動力や周りからの評価は自負しているが、さらに成長したいという思いが強いのだという。5か月以上対話を通して、Cさんは人生の目的、仕事の行動指針、ビジョンの言語化に成功。迷ったときの判断軸ができ、思考がシンプルになったとのことだった。一方のDさんもコーチングを通して理想の自分が明確になり、キャリアチェンジを決断。1か月の休職を経て以前からやりたかったことにチャレンジし、仕事に対する価値観が大きく変化したという。

Eさんは、他部署社員との人間関係に悩んでいた。その社員との相性はあまりよいと思えないが、仕事上関わらないといけないのでどうするか考えたいとのことだった。3か月以上の対話を通して、Eさんは自分の中にある相手への思い込みを発見。視点を変えるワークを実施したところ、以前はマイナスと感じていた相手の言動がまったく気にならなくなり、割り切って仕事をできるようになったという。

人によって望む人生はさまざまであり、同じ悩みでも最適な解決法は人それぞれ違う。大事なのは「自分にとっての正解」を見つけることなのだ。仕事に家庭、人間関係……生きていれば悩みはつぎつぎとわいてくる。そんなときは「自分はどんな人間でありたいのか」と、自分の心に問いかけてみよう。自分の信念を持ち、それを軸にして必要な物事を選び取って生きていれば、どんな悩みにも答えは自然と出てくるはずだ。自分らしさを楽しみながら生きるための1つの方法として、ぜひコーチングを活用してほしい。

*事例の掲載に関しては該当企業の許可をいただき、個人を特定できない形で掲載しています。

著者紹介

眞柄真有奈 Mayuna Magara ● プロフェッショナルコーチ・山野美容芸術短期大学 特任准教授 ・ソウルフルライフ株式会社 代表取締役。大学で心理・コミュニケーション学を学んだ後、人材系上場企業の営業職として1000社を超える企業の採用コンサルティングを行う。米国CTI認定 CPCCのほか、日本での保持者が300名を下回る難関ライセンスである国際コーチング連盟Professional・Certified・Coachを取得し、独立系ITベンチャーの人事部への転職も経験。その後コーチングとの出会いをきっかけに独立、個人・法人問わず1,300名以上にコーチングを行うかたわら、山野美容芸術短期大学の特任准教授に就任。コーチングのスキルを人生に活用するための講義を行っている。ミセス・インターナショナル2021 アジア・オセアニア代表。

編集協力/株式会社Tokyo Edit

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COLUMNIST

眞柄 真有奈