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ことばの力

2021.12.28

2021.12.24

ことばの力

ことばってすばらしい。
お金は1円もかからない。
それなのに、人をとびっきりの笑顔にできるもの。
それがことばだ。
誰かに言われたひと言が、涙するほどうれしかったこと。
誰しも経験があるのではないだろうか。

でもことばは、使い方が難しいものでもある。
最近はSNSでの誹謗中傷がニュースになっているように
使い方を間違えると、誰かを悲しい気持ちにさせてしまう。
人の命さえ奪ってしまう、凶器にもなる。

そこまでいかなくても、発したことばが
思いもしないような受け取られ方をすることは日常茶飯事だ。
ことばは気持ちのすべてを伝えられない。
そのうえ、一度発したら元には戻せない。

たとえば「かわいそう」ということば。
心に寄り添うような響きでありながら、
誰かを傷つけかねないことばだと思っている。
「かわいそう」には無意識の差別感情や
相手を自分よりみじめな人だと決めつける“上から目線”が感じられるからだ。

障害をもった子、病気の子。
命をかけてその子を産み、育てた母親。
みんなふつうの親子と同じように笑ったり、
悩んだりしながら日々を生きている。
それなのにある日突然、何も知らない人から「かわいそうね」と言われ、
“みじめな親子”にされてしまうのだ。
ことばの怖さはこういうところにある。

でもことばは、固く閉ざした心を開き誰かを救うこともある。
現在20歳を超えた息子は生まれつき身体が弱く、
小児病棟への長期入院もめずらしくなかった。

たえず誰かの手術が行われる、不安な毎日。
外にも出られず、学校の友だちにも会えない。
気持ちが不安定になり、心を閉ざす子も出てくる。

そんな状況のなかでも入院する子どもたちは、
たがいにことばをかけあいながら不安を乗り越えていた。
リハビリの時間になっても布団から出てこない子がいると、
そっと隣に座って声をかける。

「つまらんね、帰りたいね」
「うん」
「私だっていきたくないよ。
でも、いかないとお菓子食べれんしね」

そう言うと2人は手を取り合ってリハビリ室へと向かっていった。
大人みたいに「いきなさい」とは言わない。
ただただ気持ちに寄り添って、
いっしょにお菓子が食べたいからがんばろうと言ってくれた。
そのまっすぐな気持ちが、固く閉ざされた子どもの心を開いたのだろう。

ことばって本当に不確かなものだ。
同じことばでも
発する人や受け取る人の置かれた状況や価値観、
バックグラウンドによって
プラスにもマイナスにもなる。
自分の意図通りに受け取ってもらえる保証もない。
心に余裕がないと、いいことも悪いように受け止めてしまったり
ついついいじわるな返し方をしてしまうこともあるのが人間だ。
ことばで傷つくことや、傷つけてしまうことは避けられない。
それでも私たちはわかり合いたい、寄り添いたいと
ことばを交わし、
また誰かをよろこばせたり、傷つけたりをくり返していく。

ひとつできることがあるとしたら、
そんなことばの不確かさを認めることかもしれない。
誰かのことばに傷ついたら、
自分も同じように誰かを傷つけることのないよう
思いやりをもってことばを見直す。
思いもよらない行き違いが起きたら、
相手の立場に立って気持ちを推しはかり
誠意をもってことばを尽くす。
そういう姿勢でいれば、年を重ねるごとに
「この人を笑顔にするにはこのことば」という
“ことば選びのセンス”が磨かれていくはずだ。

これからも生きているかぎり、
ことばによって誰かを傷つけたり
傷つけられたりするだろう。
でも私は、ことばを通じて大切な人と触れ合うことをあきらめたくはない。
ことばは本来、誰かをしあわせにするためにあるのだから。

著者紹介

曽根順子 Junko Sone ● 1970年12月18日生まれ、大阪府出身。23歳で結婚し、2人の息子に恵まれる。現在は夫とともに会社を経営するかたわら、インスタグラム での商品PRも行う。趣味はゴルフ。

編集協力/株式会社Tokyo Edit

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COLUMNIST

曽根 順子