ミセス・インターナショナル/ミズ・ファビュラス ナショナルディレクターの伊藤 桜子です。私はミスコンのディレクターとして、コンテストに出場する女性たちを輝かせるのが仕事です。ディレクターであると同時に日本大会の審査員でもある私には、あるときは女性たちを評価・リードし、あるときは現場でいっしょに汗をかいて同じ目線で共感することが求められます。一筋縄ではいかないけれどもそのぶん達成感は大きく、女性たちの成長の瞬間に立ち会えることに喜びを感じる毎日。この記事ではそんな私の仕事観から、女性たちへの思いまでをお伝えしたいと思います。
無意識のうちに本当の気持ちを抑え込んでいる女性たち
女性たちを輝かせたい。その思いの原点は、自分自身の経験にあると思っています。私は子どもの頃から人が大好きで、初対面の人と仲良くなるのも得意。いっしょにいると見えるのはいいところばかりで、会う人会う人に「あなたのこういうところ、素敵ね」と伝えていました。国際交流に積極的だった母親のおかげで、日本ではストレート過ぎると思われるような表現もふつうだったのです。
大人になってこの仕事をするようになってからも、その姿勢は変わりませんでした。コンテストには20代から70代まで幅広い年代の日本女性たちが出場しますが、彼女たちの魅力を見つけては本人に伝え続けていたのです。すると返ってくるのは「そんなふうに言われたのははじめて」「自分ではそう思えないけどうれしい」といった、なんとも遠慮がちな反応が返ってきました。日本の女性たちには、自分でも気づいていない魅力や、無意識のうちに抑え込んでいる気持ちがある。それを引き出してその人本来の魅力を花開かせたい――私はそう思うようになりました。その日から女性の活躍支援が私のライフワークとなり、一生をかけたい使命となりました。
ミスコンは「自分らしさ」を見つける旅
ミスコンというと、どうしても大会当日のイメージが強いと思います。ばっちりヘアメイクをして豪華なドレスに身をまとった美人たちが、ステージ上で美を競い合う――それは事実ですが、コンテストのほんの一部でしかありません。コンテストの本質は、大会当日までの過程にあります。自分とはどんな人間で、何を大切にしていて、世界に向けて何を発信したいのか。スピーチの内容や自分らしいステージパフォーマンスを考えるうえで、そういう本質的な問いを避けては通れません。コンテストへの道のりは、そのまま自分と向き合う期間なのです。
コンテストに臨む女性たちは例外なく自分自身と向き合い、葛藤を乗り越えている。私はその葛藤の過程に寄り添う立場でもあります。この人が持つ魅力は、どうすれば花開くのか。そういう視点で落ち込む女性たちを励まし、ときには叱咤激励することもあります。叱るのは「私から見てよくない」というときではなく、「これでは大会当日までに彼女の魅力は花開かない」と感じたときです。
女性たちとのコミュニケーションで気をつけているのは、ウソをつかないこと。女性たちの本気の気持ちに応えるために、こちらも隠しごとなしでまっすぐに接したいからです。そんな気持ちが伝わっているのか、コンテスタントたちとはビジネスを超えた強い絆で結ばれているのを感じます。いっしょに食事をしたり、悩みごとを相談しあったり、家族ぐるみでお出かけをしたり。コンテストが終わっても、古くからの友人のように心地よい関係が続く場合も多くあります。
矛盾するようですが、仕事を仕事と思わないのが私の仕事術なのかもしれません。「サコは人が大好きだから、どこに行っても生きていけるね」……子どもの頃海外の友人から言われた言葉ですが、まさにその通り。大好きな人を輝かせることが仕事になった今、毎日が楽しくて時間を忘れて働いています。目の前にいる人に心から向き合い、その人のいいところを全力で引き出す。これからもそれだけを目指して、愚直にがんばっていこうと思っています。
著者紹介
伊藤 桜子 Sakurako ITO ● 一般社団法人国際女性支援協会(ブランド名:ローズ・クルセイダーズ)代表理事。外資系航空会社・投資銀行勤務を経て、2018年より現職。同協会が運営するコンテストブランド「ミセス・インターナショナル」「ミズ・ファビュラス」「ミズ・ワールドユニバーサル」「ミス・プリティーン/ミス・ティーン インターナショナル」「クイーン・オブ ザ・ワールド」「ホープ・ジャーニー インターナショナル」「ミスター・フェニックス」「ミスターナショナルユニバース」のナショナルディレクターも務める。すべての活動に共通する理念は、社会貢献。みずからの経験をもとに、年齢や立場、国籍などの枠にとらわれない女性の美を追求する。
編集協力/株式会社Tokyo Edit